日本のJAXAをはじめ、多くの先進国が行っている小惑星探査。
その主な目的は、太陽系の起源や生命の謎を調べる等の謎の解明、科学的な知見を広げるために行われています。
しかし、これからの小惑星探査の目的はそれだけではなく鉱物資源の発掘。
言い換えると一攫千金を狙った探査も行われようとしています。
そこで今、注目を浴びているのが小惑星・プシケ。
もし、この小惑星の探査に成功し資源を利用できるようになると、まさに天文学的な経済効果を生み出す可能性があるとされています。
金属で出来た特殊な小惑星「16 Psyche(プシケ)」
人類のこれまでの小惑星探査は科学的な目的のために行われて来ました。しかし、今後は人類の経済発展、商用目的でも探査が行われていくでしょう。
そんな中、注目されている小惑星があります。
それは、火星の公転軌道と木星の公転軌道の間にある小惑星帯(アステロイド・ベルト)に属する小惑星。

「画像参照:小惑星帯の軌道(Wikipediaより)」
小惑星の名は「16 Psyche」(プシケまたは英語読みでサイキ)。(以降、プシケで表記)
大きさは直径が約230キロメートルほどで、地球からは平均で3億キロほどの距離にあります。
日本の小惑星探査機「はやぶさ」をはじめ、人類はいくつかの小惑星に探査機を送っていますが、それらはどれも岩石や氷で出来ている天体ばかり。
ところがプシケの場合は、ほとんどが金属で出来ている”メタル・アステロイド”と考えられています。

「小惑星「プシケ」想像図(image credit:Arizona State University/NASA)」
太陽系には無数の小惑星が存在しますが、金属で出来たプシケのような天体は極レアなケース。
しかもメタル・アステロイドなだけに、今後の人類の資源に活用できるかもしれない!?として大きな注目天体にもなっています。
世界GDPの100万倍?とてつもない価値を持つメタル・アステロイド
金属で構成される極レアな小惑星・プシケはいったいどうやって生まれたのか?その謎を解くため、ハッブル宇宙望遠鏡等を使って観測が行われて来ました。
そしてわかって来たのが、プシケに含まれる金属の多くは鉄とニッケル。
しかも、かなり純度が高い可能性があるとの事。
何故、このようなメタル小惑星が生まれたのか?
それは、プシケを構成する鉄やニッケルが謎を解くカギで、この組成は惑星のコア(核)に良く似ており、推測では、元々惑星だったプシケは、激しい天体衝突の末、地殻やマントルが吹き飛ばされ、剥き出しになったコアが小惑星となって残ったのでは?とされています。

「画像参照:天体衝突の想像図(Wikipediaより)」
また金属天体プシケには、ニッケルが存在する事によって地球上では稀なレアメタル金属が多量に含まれている可能性もあり、その価値は1万ドルの1,000兆倍、もっと具体的に例えるなら世界のGDP(国内総生産)の10万倍以上にもなるという、まさに天文学的な金額になるのでは?と考えられています。
ちなみにレアメタルは、金属構造材料の強度を増し錆びにくく出来る添加材や、発光ダイオード、リチウム電池、永久磁石などの電子・磁石材料等様々な工業に利用され、用途が多岐に渡っていて非常に需要が高く、これからハイテク機器生産の生命線ともなる重要な資源です。
NASAが探査予定のメタルワールド・ミッション
惑星のコアが剥き出しになっているかも知れない小惑星・プシケ。もしそれが本当に惑星のコアなら、直接コアを見る事が出来る貴重な天体でもあるワケで、NASAはプシケに向け2022年に探査機を送る計画で2026年にはプシケに到着して探査が始まる予定になっています。
このように、プシケ探査の目的は惑星のコアを調べるという科学的知見を広げるためですが、やはり資源採掘として利用できるかの可能性も探る目的もあると見られています。
地球の資源枯渇が心配される中、宇宙の資源は産業を大きく発展させるために非常に重要で、宇宙開発に民間企業も参入している現代においては、資源として使える小惑星はとても魅力のあるモノである事は間違いないでしょう。
しかし、現在の技術では小惑星・プシケの資源を地球に持ち帰る事など不可能。
そもそも地球から3億キロも離れており、資源採掘等は夢のまた夢なのかも知れません。

「画像参照:小惑星・プシケの軌道(Wikipediaより)」
ただ、将来はどうなるかわかりません。
そのためにもプシケの探査は意味があり、今後可能になるかも知れない小惑星の産業利用のヒントを得られる可能性もあります。
でももし、天文学的な価値を持つプシケの資源を使用できるとなれば経済はどうなってしまうのか?
もしかしたらプシケの運命のように、世界経済は一気に吹き飛ばされてしまうかも知れませんね?!